「なぜ使えないシステムが納品されるのか?」
システムを購入するというリスク
車を購入すれば我々を遙か遠くに連れてってくれるいわゆる『車』が納品されます。
エアコンを購入すれば部屋を快適な温度に保ってくれるいわゆる『エアコン』が納品されます。
至極当然の話ではありますが、コンピュータシステムに関しては何故かそれが当てはまらず、お客様が予想もしなかった「使えないシステム」が納品されることがあります。しかも「これでは使えない」とクレームを言っても「いえいえあなたが注文されたのはこちらです」と代金はキチッと請求されます。
「そういうことはなかなかないことだろう」
そう思われるかも知れませんが、2018年の日経ビジネスの調査ではシステム開発の失敗割合は47.2%と言われており、中には泣き寝入りされているお客様もいらっしゃるためそういったケースを考慮するともっと割合は増えると考えられます。
当然コンピュータシステムの開発も通常の業務委託契約ですので、成果物(納品物)に瑕疵があれば代金は支払わなくてよいのですが、開発会社は、そこに瑕疵はなく正当に納品は完了したので代金を支払ってもらいたいと主張します。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
それはコンピュータシステムというのが車やエアコンと違い、発注時にはまだこの世に存在しない商品だからです。
発注時に存在しない商品といえば住宅などもそうですが、コンピュータシステムのようなソフトウェアはショールームで手に取ってみたり、カタログでイメージを掴むことが難しいという特徴も持っています。
発注時にこの世に存在せず、しかも完成体をイメージすることも出来ないもの購入する、、、そのこと自体が大きなリスクを孕んでいます。
もちろんコンピュータシステムを発注する際には、ぼんやりとした希望のまま契約書を結ぶわけではなく、通常、見積書は「要件定義」というどんな機能を実装したら良いかのリストを元に出され、それを元にしてお客様側で発注するかどうかの意思決定を行い、それが契約書になります。
しかし、今回お客様がご希望されているものがオーソドックスで小規模なシステムであれば、「要件定義」にすべての実装機能を挙げきることができるのですが、複雑かつ大規模で未知の機能を含むようなシステムの場合、どうしても見通しきれない部分というのが存在するものです。
そのために納品されたシステムにはお客様が「それは当然入っているだろう」と思っていたものが抜け落ちているということが間々あります。
しかし開発会社は「それが要件定義通りのシステムであり、本システムの『仕様』です」と言い張ります。
かくして、「使えないシステムが納品される」という訳です。(続く)