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システム開発が学べるコラム
Webサーバーの登場で業務システムの環境が一気に変わった!?|第2回「業務システムをWeb化するメリットは?」
業務システム開発・システム開発を学ぶインタビュー企画第二回は、「業務システムをWeb化するメリット」についてです。インターネットが当たり前になっている今、業務システムにおいてもほとんどWeb化しているとシステムコンサルタントの島田さんは話します。では、業務システムをWeb化することで、一体どのようなメリットが生まれるのでしょうか。メリットはもちろん、デメリットについても「業務システムのWeb化」について詳しくお届けします。
目次
社内LANで共有していた昔の業務システム
——今は業務システムをWeb化することが主流になっていると思いますが、従来の方法は違っていたのでしょうか。
根本的な考え方は今も昔も同じですが、かつての業務システムといえば、中央にデータを溜めるサーバーを置き、クライアントPCにソフトウェアをインストールする構成のシステムでした。
初めは多くの企業が、Excelなどのオフィス系ソフトを使って給与計算などの管理をしていますが、だんだんとその情報をみんなで共有したくなってきます。でもExcelで作ったものを一人一人に配布していると、他の人が編集し更新するまで待たなければならなかったり、渡したばかりの情報がすぐに古くなったりしてしまうので、効率はよくありません。
じゃあどうすればいいのか……そこで出てきたのが“データベース”という概念です。データベースをサーバーに置くことで、みんなで一つの情報を編集したり、閲覧したりできるようになり、わざわざ自分で作った情報を配布する必要がなくなりました。
——なるほど。一人一人が更新した情報がそのデータベースに集まり、自由に閲覧できるというわけですね。
そうです。そのシステムが1995年ぐらいから一般企業でも取り入れるようになってきました。
でも当時はまだWeb技術で業務システムを組むというのは一般的ではなく、社内LANを使って端末(クライアント)とDBサーバーを繋いでいました。社員それぞれが使用するパソコンにはソフトウェアがインストールされている状態で、社内LANを使用して中心のDBサーバーにあるデータを更新したり見たりするスタイルですね。昔は、こういうスタイルで業務システムが構成されていました。
ただ、このやり方ですといろんなデメリットが出てきます。ひとつひとつの端末にソフトウェアをインストールするので、不具合が出るたびにすべての端末をチェックしアップデートしていかなければなりません。
また、機能を追加したいというときもすべてのPCでソフトの更新をしなければならないですし、誰がどの端末を使っているのか管理をしなければならない。つまり、“保守”が大変になります。さらに、端末によっても画面が大きなものや小さなものもあるので、それによって見え方も変わってくるんです。
——今に例えると、PC、タブレット、スマホとそれぞれでWebサイトを見る画面が変わることと同じですね。
そうですね。昔も大きな画面で見る人がいれば小さな画面で見る人もいたので、それぞれに合わせるのがとても大変な状態でした。そういうこともあり、2000年ぐらいから社内の業務システムも徐々にInternet ExplorerやFireFoxといったブラウザを使ってデータベースを見るなど工夫されるようになってきたんです。
専用ソフトを使っていたものがブラウザへと環境は変わりましたが、同じデータをみんなで共有するという根本的な部分は今も変わっていません。この根本的な部分は、個人的に大切なポイントだと思っています。
Web化することで得られる5つのメリット
——では、業務システムをWeb化するとはどういうことなのでしょうか。
業務システムのWeb化の特徴は、端末とDBサーバーの間にWebサーバーを置き、そこにソフトウェアを配置するということです。
昔は端末から直接DBサーバーを見ていましたが、Web化することで端末からはWebサーバーのほうを見てもらうようになりました。
——DBサーバーとWebサーバーの違いは何でしょう?
DBサーバーはデータが溜まる場所。そのデータを読んだり書いたりするのがWebサーバーです。ソフトウェアを使わないとデータを書いたり読み込んだりできないので、そういうことができるWebサーバーを端末とDBサーバーの間に置いています。そうすることで、端末ごとにソフトウェアをインストールする必要がなくなり、ブラウザでアクセスしてもらえばデータを更新したり閲覧したりできるというわけです。
——業務システムをWeb化することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
業務システムをWeb化することで得られるメリットは、全部で5つあります。
まず1つ目は「プログラムの更新が簡単にできる」ことです。
ブラウザで画面を作ったほうが、ちょっとした追加や修正も簡単にできるようになりました。プログラムをWebサーバーのほうに置いておけるので、Webサーバーのほうで直せば全端末にすぐ反映されるようになります。なので、インストールやアップデートを各々で作業する必要がなく、お客さまの作業も止める必要がありませんし、我々開発する側にとっても非常にありがたいです。
2つ目は「会社外部からもアクセスしやすくなった」こと。
ノートパソコンといった軽い端末が主流になる2000年代前は会社の中で仕事をするのが主流でしたが、だんだんとPCも軽量化されていき、外出先の端末からでもアクセスできるようになりました。PCの軽量化とWeb技術の発達によって、会社外部からも業務システムにアクセスしやすくなったんです。
今はコロナ禍になり、家からでも気軽に会社のデータを閲覧できるようにしたいというケースが増えてきたと思います。その場合、ソフトウェア会社の方にわざわざ家に来てもらうわけにはいきませんよね。そういう意味でもブラウザで仕事ができるようになると、ソフトウェアがWebサーバーの中にあるので、端末ごとにインストールせずともデータが簡単に見られるようになります。
3つ目は「安価でセキュリティを確保する方法が普及した」ことです。
昔だと、セキュリティを担保するために高額な機材や回線を購入しなければなりませんでした。それが今は“VPN”というVirtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)と呼ばれる方法が出てきて、このVPNを利用することで、通信を覗き見されることなく安全にサーバーに接続できます。VPNが月々数千円で使えるようになってきたこともあって、データをブラウザ上で閲覧する会社も増えてきました。
——“仮想”という言葉はよくニュースでも耳にするようになりましたが、業務システム開発においても広がっているのですね。
そうですね。何がバーチャルかというと、昔は社内のネットワークが有線ケーブルで繋がっていたので物理的に閉じていたのですが、公衆回線を使った業務システムでは基本的にオープンです。それを暗号化技術を使って流れているパケットの内容を解読されないようにして、仮想的に閉じているようにしたのがVPNの本質となります。
——なるほど……!
そして、4つ目になりますが「公衆回線が高速になった」ことも業務システムをWeb化したメリットです。
2000年ぐらいからどんどん回線が高速になっていき、ADSL(※1)やISDN(※2)といった通信方法が開発され普及するようになりました。
(※1:Asymmetric Digital Subscriber Lineの略で、一般の電話回線を使用し高速なデータ通信を行う技術のこと。)
(※2:Integrated Services Digital Networkの略で、電話線を使用したデジタル回線のインターネット通信技術のこと。)
このように、いろいろな通信技術が出てきたので、社内LANの速度に引けを取らない、むしろそれよりも速いんじゃないかという環境になってきたんです。Webサーバーという公衆回線にすることで作業もやりやすくなりました。
第1回「業務システムとは?」でもお話したように、業務システムはスピードが命なのでやはり回線が遅いと使いものにならなくなります。昔はそこまで公衆回線が速かったわけではないので、業務システムをWeb化するとスピードが遅くなることもあり、Webサーバーを置くこと自体嫌がられていました。
——公衆回線が発達したからこそ、業務システムのWeb化が実現したところもあったのですね。
それが、最後のメリットになる「いろいろな端末でデータが見られるようになったこと」にも繋がります。
タブレットやノートPC、今ではほとんどの人が持っているスマホにもブラウザが搭載されているので、業務システムをWeb化することでさまざまな端末から見られるようになりました。
先ほども少しお話しましたが、長く使われてきた専用ソフトは歴史が長い分、画面で使えるパーツが揃っていますが、ブラウザは本来そういう使い方をするソフトではないので画面の表現力が劣っていました。そのため、業務システムのWeb化を嫌がるお客さまもいたんです。ただ、世間一般でWeb化の流れが止まらなくなり、それによって無償のパーツや汎用ライブラリが増えていき、どんどん画面の表現力が上がっていきました。
Webが主流になっている今では、ほとんどの業務システムがWeb化されています。LANを使ったWebシステムというのもありますし、公衆回線を使って端末にインストールするタイプの業務システムを組むことも可能です。
- プログラムの更新が簡単にできる
- 会社外部からもアクセスがしやすい
- 安価でセキュリティを確保できる
- 公衆回線が高速になった
- いろいろな端末でデータが見られる
ただしデメリットもある
——業務システムをWeb化したほうがメリットはたくさんありますが、デメリットもあるとか……。
そうですね。デメリットとしては、専用ソフトよりも画面表示のスピードが遅くなるところでしょうか。端末とDBサーバーの間にWebサーバーを置いているので、負荷がかかってワンテンポ遅れてしまうんです。入力時の反応速度に関しては、どうしても専用ソフトに敵わないところがあります。
また、セキュリティ面における不安要素も拭いきれないところがありまして……例えば、従来の方法で使われてきたLANはLocal Area Networkといって、外からは物理的にアクセスできません。そういう意味では、セキュリティ面での安心があります。
けれども、Webサーバーは基本的にインターネット回線を使うことが多いので、どこからでもアクセスできちゃうんです。そういう意味でも少し危ない面があるので、中には自社のパソコンにセキュリティソフトを入れ、VPNの設定をし、IPアドレス制限をかけ、かつその設定を変更できないようにして、その端末からしかアクセスできないようセキュリティ対策をしている会社もあります。
——Web化することで生まれるデメリットは、解消できるものなのでしょうか。
仕組み上、どうしても難しいところがあります。なぜなら、利便性とセキュリティリスクは両立できない関係性だからです。Web化のデメリットを全て解消しようとすれば、それによって利便性が失われる可能性があります。
どのようにしてセキュリティリスクを抑え利便性を維持するかは業務システムをWeb化する課題でもありますが、何よりも業務システムのデータをみんなで共有する発想自体は変わらずずっと同じであり、業務システムのWeb化によって環境が変化するということを知ってもらいたいです。
仕組み上、どうしても難しいところはありますが、業務システムをWeb化する環境は刻々変化しています。業務システムのデータをみんなで共有するという発想自体は変わらずずっと同じであり、業務システムのWeb化によって環境が変化するということを知ってもらいたいです。
まとめ
第2回「業務システムをWeb化するメリットは?」についてお話しました。
従来の業務システムは、端末(クライアントサーバー)ごとにソフトウェアをインストールし、直接DBサーバーに触れては、追加や修正が必要になるたびに各端末のアップデートも必要になるという手間のかかるものでした。
けれども、端末とDBサーバーの間にWebサーバー(ソフトウェア)を設置することによって、一気に環境が変わります。つまり、業務システムをWeb化すれば、プログラムの更新が簡単になる、外部からもアクセスできるようになる、安価でセキュリティを確保できる、公衆回線が高速になる、いろいろな端末でデータが見られるという5つのメリットが生まれるのです。その結果、業務システムも管理しやすくなりました。
今回のお話を大きくまとめると、
- 業務システムのWeb化による環境の変化
- 業務システムをみんなで共有する根本的な発想は変わっていない
上記の2つがポイントになると思います。業務システムのWeb化で環境が変化しても、「みんなでデータを共有する」という根本的な発想は今も昔も変わりません。
さて、次回は「業務システムのUI」というテーマでお届け。業務システム開発において「UI」は欠かせない要素のひとつです。業務システム開発の理解を深めるために、次回もぜひお見逃しなく!
株式会社プラムザは、開発実績25年・取引企業数300社のシステム開発会社です。さまざまな業種・業界で使用されるオリジナルのシステム構築を得意としています。
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